134 / 226

20

 いつもより真摯な、いつもより切ない、いつもより切羽詰まった声色で。  昴は初めての言葉を、暁斗に贈った。 「愛してるよ、暁斗。僕は暁斗を、愛してる」 「昴さま……!」  報われた、と暁斗は感じた。  これまで生きてきて、決して楽しいことばかりではなかった。  この世に生を受け、様々な苦しみ、痛み、辛さに耐えてきた。  それらが、一気に溶けていく。  溶けて流れて、消えていく。  取るに足りない、悩む必要はないものとして、消えていく。 (まさしく、初夜なのだ)  そう、暁斗は思った。  まるで、生まれ変わったかのような覚醒感を、味わっていた。 「私も、あなたを愛しています。この世の、誰よりも」  藤原の家よ。  私は執事として、藤原家のためならば、この命すら捧げましょう。  ですが、お許しください。 (柏 暁斗として、この世で最も大切なのは、藤原家ではなく昴さまです!)  誰にも言えない秘密を、この日この晩、暁斗は抱えた。  その秘密と共に、昴をしっかりと抱きしめた。

ともだちにシェアしよう!