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いつもより真摯な、いつもより切ない、いつもより切羽詰まった声色で。
昴は初めての言葉を、暁斗に贈った。
「愛してるよ、暁斗。僕は暁斗を、愛してる」
「昴さま……!」
報われた、と暁斗は感じた。
これまで生きてきて、決して楽しいことばかりではなかった。
この世に生を受け、様々な苦しみ、痛み、辛さに耐えてきた。
それらが、一気に溶けていく。
溶けて流れて、消えていく。
取るに足りない、悩む必要はないものとして、消えていく。
(まさしく、初夜なのだ)
そう、暁斗は思った。
まるで、生まれ変わったかのような覚醒感を、味わっていた。
「私も、あなたを愛しています。この世の、誰よりも」
藤原の家よ。
私は執事として、藤原家のためならば、この命すら捧げましょう。
ですが、お許しください。
(柏 暁斗として、この世で最も大切なのは、藤原家ではなく昴さまです!)
誰にも言えない秘密を、この日この晩、暁斗は抱えた。
その秘密と共に、昴をしっかりと抱きしめた。
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