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「ぐあッ!」  がつん、と鼻に固い何かがぶつかり、暁斗は慌てて飛び起きた。  咄嗟に顔に手をやると、赤いものが付いている。 「鼻血……?」  初夜明けの朝に、よりによって鼻血を出すとは。  ベッドサイドのティッシュで血を拭きながら、暁斗は隣の昴に目をやった。  胸の中に、しっかりと抱いて眠ったはずの、昴。  だが、暁斗の枕元にあるのは、なぜか足なのだ。  寝相が悪く、完全に逆さまになって、それでも安らかに眠っているのだ。 「昴さま、起きてください。朝です」 「……ヤだ」 「ご家族での朝食の席に、遅れますよ」 「……行かない。今日は欠席する」  また、わがままを言う、と暁斗は頭を抱えた。  二人で愛し合った翌朝は、いつもこうなのだ。 「では、朝食は私が作りますから。とにかく起きてください」 「……」  無言の昴に、暁斗が絶望しかけたその時に、小さな声が聞こえた。 「オムレツがいい。ふわふわとろとろで、甘いの」  はいはい、と暁斗はベッドから這い出し、手早くシャワーを浴びると調理に取り掛かった。

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