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「心なしか、お顔が染まっておいでですよ。お熱を測りましょう」  古川の心配はありがたいが、今は独りになりたい気分の昴だ。  そこで今度は、少々突き放した返事をした。 「大丈夫だから、放っておいてよ」  しかし古川は、諦めない。  秘密めかした表情で、声をひそめた。 「……もしや。あの件、でございますね?」  あの件?  初めて昴は、真面目に古川に向き合った。  まさか……。 (まさか古川は、僕と暁斗の秘密を知っている!?) 「東広場の花園を潰して、噴水を造る計画でございます」 (残念でした。古川、ハズレ!)  だが、確かにそれも、昴の心に憂いをもたらしている。  そこで彼は、無言でうなずいた。  そんな昴の様子に、やはり、と古川は難しい顔をした。 「昴さまが、旦那様に御意見してくだされば。そうしたら、あんな計画は白紙撤回に……」 「もう少し、考えさせてくれないかな? 今、最善策を練っている最中なんだ」 「これはお邪魔いたしました」  失礼します、とようやく古川は、その場を去ってくれた。

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