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「はぁ……」
古川の姿が見えなくなり、昴はもう一度溜息をついた。
空は、ぼんやり曇り空。
「物思いにふけるには、確かにいい日和かもしれないけれど、ね」
花園の件は懸案事項だが、それを考える余裕が、今の昴には無い。
「……暁斗のバカ」
昴は、ここにはいない暁斗を、小さな声で罵った。
彼は10日以上前に、研修で遠方へ発ってしまったのだ。
暁斗に会いたい。
暁斗の声が聞きたい。
暁斗に触れて欲しい。
「暁斗……」
熱い息を吐き、瞼を閉じる。
唇を薄く開けて呼吸をしながら、指と指の間をこする。
今、どこにいるのだろう。
今、何をしているのだろう。
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