143 / 226
4
「浮気なんかしてたら、ただじゃおかないんだから。バカ暁斗!」
「誰が、馬鹿でございますか?」
小さな言葉をさとく拾った声に、昴は驚いて飛び上がった。
あぁ。だけど、この声は!
「暁斗!」
「ただいま戻りました。昴さまは、お元気でしたか……わずか10日間では、大袈裟ですね」
近づいてくる暁斗に、昴は抱きつきたかったが、必死で抑えた。
先程の古川のように、誰がどこから見ているか、解からないのだ。
「研修は?」
「予定通りに終わりました。旦那様にも、これから報告しなくては」
「お父様より先に、僕に会いに来てくれたなんて!」
昴はそれだけで、舞い上がってしまった。
「ね、暁斗。今夜、僕の部屋へ来てもいいよ。軽食でも用意して、待ってるから!」
昴が自室へ招いてくれることなど、滅多にない。
暁斗は驚き、また嬉しく思った。
「ありがとうございます。たまには、留守にしてみるものですね」
では夜に、と暁斗は去って行った。
その背中を、昴は夢見心地で眺めていた。
ともだちにシェアしよう!

