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 昴が準備を整える前に、暁斗が来てしまった。  まぁ、彼の長風呂が招いた失敗なのだが。  以前の昴なら、暁斗をいったん追い返し、改めて訪問させるところだ。  しかし彼は、自分の過ちを認めて素直に謝った。 「ごめん。まだ軽食の用意とか、できてないよ」 「では、私も手伝います」 「本当!?」  そこで二人は、仲良くキッチンに立った。  暁斗の部屋と同じく、昴のプライベートルームにも、簡易キッチンが備わっている。 「私のキッチンより、高性能ですね。さすが、昴さまのお部屋です」  腕が鳴る、と暁斗は張り切った。  以前は料理など、ほとんどしなかった彼だ。  しかし、昴のために何かと用意するうちに、すっかり趣味に落ち着いてしまった。  色鮮やかなカプレーゼに、エビをあしらったサガナキ。  ほくほくのポテトサラダに、アピオスのフライ。  スウィーツは、暁斗がおみやげに持ってきた、カヌレだ。  あっという間に食卓は鮮やかに潤い、二人は上機嫌で乾杯した。  ほとんどは暁斗が作ったのだが、昴のアシスタントぶりも見事だった。  段取りを知っていればこそのサポートを、自然とやってのけたのだ。  これには暁斗も驚き、そして喜んだ。 「昴さまは(意外にも)料理がお上手ですね」  そんな風に一部は隠して褒めながら、ワインを飲み、ぱくぱくと良く食べる。  彼に併せて食事を楽しんでいた昴だが、しばらくすると焦れ始めた。

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