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 昴の寝室は、そして大きなベッドは、豪奢だ。  しかも、ほのかにバラの香りまで漂っている。 (昴さまが、自らご準備くださったんだろうな)  そう思うと、愛しさが暁斗の胸いっぱいに広がった。  昴と暁斗は清潔なベッドに腰を下ろし、向かい合った。 (いかん。久々の昴さまを前にすると、どうしても苛めたくなってしまう……!) 『では、少し時刻は早いですが……寝所へ』 『うん。まぁ、別に構わないけど?』  昴は先ほど、こんな意地っ張りな返事を寄こしてきたのだ。  その時に我慢した言葉遊びで、彼を優しく苛めてあげたい。  暁斗は微笑んだ。  だがそれは、ちょっぴり悪い笑いだった。

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