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「血気盛んですね、昴さま。何か、奮い立つような出来事でも?」 「えっ? いや、別に……?」  家長を説き伏せた割には、何とも歯切れの悪い返事だ。  古川は怪訝に感じたが、これから人に会う、という昴だ。  うやうやしく一礼すると、その場を去って行った。 「昴さま、当てて見せましょうか」 「暁斗!?」  いつのまにやら、待ち合わせの男がここにいる。  暁斗は目を細めると、昴の唇に指先で触れた。 「私と臥所を共にして、精が付いて。ですから、力も付いた。そうでしょう」 「ち、違う! 淫らなことを言うな!」  違うと言いつつ、図星の昴だ。  久々に暁斗の顔を見て、その肌に触れて、たちまち元気になったのだ。 「私は素直な昴さまが好きです、と申し上げたはずですが?」 「……ッ!」  昨夜の情事を思い出し、昴は赤くなった。  そう。  暁斗は確かに、そんなことを言っていた。  そして僕は……。 『あぁッ、ダメッ! 気持ちいいの、キちゃう!』 『イく……イッちゃうぅッ!』 『我慢できない……。気持ちいいの、もっと欲しいッ!』 (僕は……僕は、何て恥ずかしい言葉を口走ってしまったんだろう!)  しかしあれは、言う・言わないの判断などできない、昴の心の声だった。

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