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 真っ赤になって、うつむいてしまった昴。  暁斗は、少し苛めすぎたかと思い、労わりの声を掛けようとした。  しかし、昴はこぶしを握りしめ、震わせていたのだ。  これで大人しくなるかと思いきや、逆に暁斗に食ってかかった。 「僕は、素直なんかじゃないし! だから暁斗も、僕を好きでなくっても、いいよ!」  ここでまた、昴の癇癪が、わがままが炸裂してしまった。  これほど愛情を育んでも、まだ素直になれない部分があるのか。  しかし、今の昴が暁斗に浴びせる言葉には、かつての棘や毒が無い。  彼に寄り添い、心を開き、愛し合うようになった昴が何を言おうと、そこに本気の嫌味は無いのだ。 「素直な昴さまは、好きです。ツンデレの昴さまは、もっと好きです」  さらに暁斗の方が、昴より一枚上手だ。 「暁斗のバカ!」 「それで良いのですよ」  こつん、と額と額を合わせ、どちらからともなく笑った。  回廊を抜ける風は、花の香りを運んできた。

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