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「本当に。昴は、立派に成長した!」 「どこに出しても恥ずかしくない、藤原家の一員ですわね」  そう笑顔で語り合っているのは、昴の両親だ。  特に、この末っ子を溺愛している父親は、ご機嫌だ。 「いつまでも私の傍に置いておきたいが、そろそろ本人の幸せを考えてやらねばなぁ」 「しかるべき名家の元へ、ご縁を結んであげましょう」 「絶対に、苦労をしないところへ輿入れだ。小早川子爵の長男は、どうだろう?」 「あの方でしたら、第二性もアルファですわ。オメガの昴とは、相性が良いかも」  昴と暁斗の知らない場所で、着々と縁談が進んでいる。  そして古川執事に、大至急の仕事が任された。 「小早川子爵の長男・文康さん、三河内男爵の次男・明将さんの身辺を、調査してくれ」 「大野原伯爵の三男・智弘さんも」  かしこまりました、と応えながらも、古川は胸の内で考えた。 (どなたも、名家の御曹司だ。と、いうことは……)  古川が結論を出す前に、家長がさっさと口にした。 「実は、昴に縁談を、と思ってな」 「良く調べて、先方に黒い影など無いか、確かめてちょうだい」 「笹本男爵の長男は、ああ見えてギャンブルがお好きだったからなぁ」 「美姫を嫁がせる前に解って、何よりでした」  頭を下げながら、古川は自由奔放で快活な昴を思い描いていた。 (昴さまが、輿入れ。あんなに、お若いのに……)  社交界では、わがまま子息、と名高い昴。  しかし古川は、気づいていた。  最近の昴は、人間的にずいぶん成長している、と。  わがままは相変わらずなのだが、それは憎めない魅力となっている、と。

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