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もしや昴さまは、気づいておられるのでは……?
暁斗がそう考えついた理由は、ちゃんとある。
今回の研修は、深い意味を持つものなのだ。
昴と密かに婚姻の契りまで結んだ暁斗は、さらなるスキルアップを求めるようになっていた。
(昴さまに相応しい人間となり、旦那様から結婚のお許しをいただきたい……!)
無理は承知、無茶も承知の願いだ。
元より、執事が主人と結ばれる、など夢物語。
(もし昴さまが、身分の低い私と一緒になったとしたら。藤原家は、社交界の笑いものになるだろう)
それを思えば、ここは潔く身を引くことが、昴のためだ。
頭では、解っている。
しかし、心が納得できないでいる。
(たとえ無理でも、無茶でも。無駄ではない努力は、必要だ!)
そう考えた暁斗は、密かに海外留学を視野に入れた勉強を始めていた。
歴史のある、バトラーアカデミーで学び、超一流の執事になる。
さらに、富裕層を顧客にしたコンサルタントになり、資産運用のアドバイザーとして手腕を振るうつもりなのだ。
そんな遠大な計画を、昴にはまだ打ち明けてはいない。
とにかく、この一ヶ月間の研修で自分の技量を計り、思い描く未来が現実的かどうかを見極める。
(その時こそ、昴さまにお話ししようと思っていたのだが……)
彼の執着ぶりを見ると、自分の考えなどお見通しなのかと、疑ってしまうのだ。
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