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 確かめる意味もあり、これ以上争う必要は無いと、暁斗は昴を黙って抱き寄せた。  優しく、ふんわりと温めた。 「あ、暁斗?」 「一ヶ月以上、昴さまと会えずに淋しい思いをするのは、私も同じです」 「え……」 「ですが、大切な勉強なのです。嫌でも、行かねばなりません」 「うん……」 「おみやげを、たくさん買ってきますから。良い子で待っていてください」 「解かった!」  あっという間に笑顔になって、暁斗を快く見送る態度に豹変した、昴だ。  少しばかり拍子抜けしたが、計画を知られてはいないと解って、暁斗はホッとした。 『一ヶ月以上、昴さまと会えずに淋しい思いをするのは、私も同じです』  昴は、暁斗の言葉を思い返しては、ニコニコしている。  淋しい、と。 (口下手な暁斗が、僕と会えないのは淋しい、って言った!)  その一点のみで、昴はご機嫌になった。 「ね、おみやげは絹のネクタイがいいな!」 「お似合いの品を、探しますよ」 「浮気なんか、しないでよね!」 「ご安心を。絶対に大丈夫です」  そして大きなキャリーバッグは、昴の部屋の隅に放置された。

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