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「どうかなさいましたか、昴さま」 「えっ?」  花園でぼんやりしているところを、昴は呼び止められた。  以前、ここの存続を憂えていた古川執事だ。  昴が見事に開発の計画を阻止してから、彼は何かと声を掛けてくるようになっていた。 「心ここにあらず、といったご様子です」 「別に、何でもないよ」 「お淋しいのですね。柏が、おりませんので」  昴は、血の気が引く思いだった。 (なぜ、それを!? 古川は、僕たちの関係を知ってる……!?) 「このところ、よく御一緒に花壇をいじっておられたでしょう」 「あ、えっと……」 「傍に手伝いがいないと、物足りないかと思いまして」 「そ、そうだね。うん」  幸い古川は、昴と暁斗が深い仲であることには、気づいていない様子。  のんびりと、散策など勧めてきた。  昴はホッとしたが、それは古川が表に出さないだけだ。  本当は、二人が愛し合っていると、見抜いていた。

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