165 / 226
6
(とにかく、僕が暁斗を好きだ、って気づかれないようにしなきゃ!)
ぎくしゃくと、昴は歩き始めた。
古川も、それに続く。
「心が晴れない時には、体を動かすに限ります。こうやって散策するだけでも、ずいぶん違います」
「そう?」
「特に昴さまは、この花園の恩人です。花々も喜んで、あなた様を慰めましょう」
花園の恩人、などと褒められては、昴も悪い気はしない。
歩きながら、その日は古川といろいろな話をした。
『そして、暁斗がね……』
『暁斗は、違うんだ……』
『やっぱり、暁斗は……』
うかつにも、暁斗のことばかり話題にする、昴だ。
しかも『柏』ではなく、『暁斗』と名で呼んでいる。
これで古川は、昴の暁斗に対する想いを、確信した。
(昴さまは、間違いなく柏を愛しておられるんだ)
そんな昴は、彼の胸の内に全く気付かず、さっぱりした顔つきになっていた。
不思議なことに、心持ちも軽くなった。
「ありがとう、古川。僕は、もう行くから」
「御心は、晴れましたでしょうか?」
「うん。今夜は、ちゃんと眠れそうだよ」
「それは、ようございました」
にっこりと微笑む古川の顔つきは、どこか暁斗に似ている。
久々に明るい気持ちで、昴は自室へと戻った。
だがしかし。
ともだちにシェアしよう!

