171 / 226
12
「古川が、本当に夜這いに来たのかな!?」
(もしそうなら、すぐに藤原家から追い出そう!)
昴は、端末とゴルフクラブを手にして、ドアへ向かった。
(来るなら来い! ぶん殴って、通報してやるから!)
しかしながら古川は、昴が勝手に夢に見ただけなのだ。
彼には、何の罪もないというのに。
幸い、深夜の訪問者は古川ではなく、意外な人物だった。
「昴さま、ただいま帰りました」
「暁斗!?」
「な、何ですか!? 素裸で!」
昴は面倒な返事はせずに、夢中で暁斗に抱きついた。
(もしかして、これも夢!?)
「夢でもいい! こうして、暁斗に触れられるなら!」
「一体、どうしたのですか!?」
暁斗は夢でも嘘でもなく、本物らしく世話を焼いてきた。
「とにかく、これを羽織ってください」
彼は急いでコートを脱ぎ、昴の体に掛けた。
小さな主人の華奢な体を部屋の奥へと押し込み、エアコンを入れる。
蜂蜜入りのホットワインを作って手渡すと、昴はようやく人心地着いたようだった。
ともだちにシェアしよう!

