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 ホットワインに、ふうふう息を吹きかけながら、昴は素朴な疑問を口にした。 「でも、どうして早く帰って来たの? 暁斗、研修サボったの?」 「そんなズルは、しませんよ」  実は、と暁斗は嬉しそうに語った。 「講師の先生が、私のレベルならば、もうこの研修を受ける必要は無い、とおっしゃってくださったのです」 「すごい! 優秀なんだね!」 「ありがとうございます」  そこで講師は、暁斗へ推薦状を手渡した。  しかるべきアカデミーへ進み、スキルアップに励みなさい、というわけだ。 「じゃあ、ここで働きながら、学校へ通うの?」 「それは……大切なことですので、後ほど改めて」  それよりも、と今度は暁斗が、素朴な疑問を投げかけた。 「なぜ、昴さまは裸だったのですか? 何か、怪しゅうございます」 「怪しい、って。こっちは、大変だったんだから!」 「何が、でございますか?」 「う……」  まさか、古川に抱かれる夢を見て夢精しました、とは口が裂けても言えない。  黙ってしまった昴を、暁斗は抱き寄せた。 「よもや、浮気をしていた、などと……」 「違うよ、バカ!」 「冗談ですよ」  小さく笑って、暁斗は昴に可愛らしいキスをした。

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