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暁斗の一ヶ月間の研修は、自分の技量を計り、思い描く未来が現実的かどうかを見極めるためのものだった。
さらなるスキルアップのためだった、はずだ。
『昴さまに相応しい人間となり、旦那様から結婚のお許しをいただきたい』
『もし昴さまが、身分の低い私と一緒になったとしたら。藤原家は、社交界の笑いものになるだろう』
このように考えて、まずは暁斗自身が、優れた人間になるためだった。
海外の、歴史あるバトラーアカデミーで学び、超一流の執事になる。
さらに、富裕層を顧客にしたコンサルタントになり、資産運用のアドバイザーとして手腕を振るう。
そうした上で、昴をパートナーにしたい、と家長に申し出る。
これが、暁斗の理性が描いた、未来予想図だった。
だが最近では、感情が悲鳴を上げ始めていた。
『昴さまと2年間も離れて、私は正気でいられるだろうか』
『2年の間に、昴さまに他の恋人ができたりしたら……』
このような暗い思いが胸に渦巻き、じっとしてはいられない焦燥感に駆られるのだ。
暁斗は芯から、昴に恋い焦がれるようになっていた。
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