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茜雲の美しい川沿いを、昴と暁斗はゆっくり歩いていた。
昴のボディガードは、暁斗のほかにも数名いる。
しかし彼らは、送り迎えの自動車で待機している。
そうするようにと、昴が命じたのだ。
ボディガードたちはためらったが、わがまま子息の命令は絶対だ。
暁斗が、合気道の師範資格を持つほど屈強な人間、ということもあり、二人きりの散策が実現した。
「ね、暁斗。手を繋ごうか?」
「さすがに、それはいけません。後ろから低速で、お車がついてきております」
運転手やボディガードに、見られてしまう。
そうなると、すぐに昴の両親へ報告されてしまうだろう。
「私と昴さまの秘密が、バレてしまいます」
「つまんないの!」
「その代わり、すぐ先の斜面に座りましょう。大切なお話しが、ありますので」
「大切なお話し?」
暁斗が指し示した方向には、柔らかな芝で覆われた、緩やかな土手がある。
二人は、そこに到着するまで、無言だった。
(昴さまに、打ち明けよう。私の計画を、そして想いを)
(暁斗の話し……なんだろう?)
夕空は、さらに赤く染まっていく。
日没まで、もうあまり時間が無い。
そんな光景は、暁斗の気持ちを、さらに焦らせていた。
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