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「……私の留学は、旦那様も喜んでくださいました。すでに了承済みです」 「お父様は、僕も一緒に、って許してくれたの?」 「いえ。それはまだ、お伝えしておりません」 「だよね、やっぱり」  昴を溺愛している父親が、そう簡単に暁斗との結婚を認めてくれるはずがない。  少し考えた後、昴は暁斗に言った。 「僕が、お父様にお願いするよ」 「昴さまが?」 「そう。暁斗の留学がうらやましいから、僕もついて行って海外で勉強したい、って」 「……」 「突然に、結婚したい、って言うより、巧くいくんじゃないかな?」 「なるほど」  暁斗は、昴の考えにうなずいていた。  確かに、執事の分際で藤原家の子息と一緒になりたい、というよりマシだ。  しかし、暁斗の表情は、やや不安げだった。  100%の全てを安心しては、いないのだ。 「もう! そんな顔、しないで。僕を信じてよ!」 「しかし、それでは昴さまが旦那様に、お叱りを受けるのでは?」 「大丈夫! 任せといて!」  暁斗の心を晴らすため、昴は元気よく言った。  本当のところ、彼自身も巧くいくかは半信半疑、くらいの気持ちだったが。  それでも暁斗を安心させるため、精いっぱいの明るい笑顔を見せた。

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