185 / 226
6
『僕が、お父様にお願いするよ』
暁斗には、こう提案したものの、昴は未だ両親に言い出せずにいた。
なるべく、お父様のご機嫌が良い時に。
なるべく、お母様のお気持ちが晴れやかな時に。
そう考えて、両親の顔色をうかがっているうちに、一週間が過ぎようとしていた。
多忙な父母が、二人揃って昴と共に過ごす時間も限られており、それも打ち明けられない要因の一つだ。
暁斗と一緒に、海外へ行きたい。
この一言が、告げられないでいた。
そんな日々を重ねるうちに、暁斗の心に疑念が湧き始めていた。
「昴さまは、本当は私と渡航などしたくないのでは……?」
深夜、独りで寝付けないまま、考える。
グラスに一つ、また一つとウイスキーを注ぎながら、昴の言葉を思い出していた。
ともだちにシェアしよう!

