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『僕が、お父様にお願いするよ』  暁斗には、こう提案したものの、昴は未だ両親に言い出せずにいた。  なるべく、お父様のご機嫌が良い時に。  なるべく、お母様のお気持ちが晴れやかな時に。  そう考えて、両親の顔色をうかがっているうちに、一週間が過ぎようとしていた。  多忙な父母が、二人揃って昴と共に過ごす時間も限られており、それも打ち明けられない要因の一つだ。  暁斗と一緒に、海外へ行きたい。  この一言が、告げられないでいた。  そんな日々を重ねるうちに、暁斗の心に疑念が湧き始めていた。 「昴さまは、本当は私と渡航などしたくないのでは……?」  深夜、独りで寝付けないまま、考える。  グラスに一つ、また一つとウイスキーを注ぎながら、昴の言葉を思い出していた。

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