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何もかも、お見通し。
さっさと白状なさい。
そんな含みのある、昴の母・時子の言葉に、古川は早々に降参した。
(時子さまに、嘘やごまかしは通用しないだろう)
かくなるうえは正直に話し、暁斗と昴を擁護した方が、わずかではあるが光が見える。
そこで、明るくさらりと答えた。
「昴さまのお相手は、柏 暁斗です」
「……」
まさか、執事と恋に落ちているなんて。
時子は少なからず動揺したが、瞳を揺らしただけで、すぐに持ち直した。
そこへ、今度は古川が攻勢に出た。
「柏は、真面目な人間です。昴さまを、真剣に愛しています」
そして昴さまも、そんな柏を愛しておいでです。
普段は朗らかで、軽い口調の古川が、顔つきを引き締めて告白している。
(これは。古川の言うことは、真実ね)
それを踏まえて、どう動くべきか。
時子は、すでにそちらの方向を向いていた。
彼女から何もリアクションをもらえない古川は、思わず問いかけた。
「あの……時子さま?」
「えっ? あぁ、そうね。下がっていいわ」
時子からは、何の情報も見いだせない、古川だ。
(二人の仲を、認めてくださるのか。それとも、反対なさるのか)
解らないまま、彼は仕方なく時子の部屋から退出した。
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