192 / 226

13

 暁斗は、やけにすんなりと時子の部屋へ通された。  普段なら、改めて日時を指定されるところだ。  プライベートルームではなく、別室でボディガードたちも同席のはずだ。  古川から事前に聞かされていたとはいえ、やや構えた気持ちで、暁斗は勧められるまま椅子に掛けた。 『時子さまは、柏と昴さまが愛し合っていることを、すでにご存じだ』  早足の暁斗に追いついた古川から、そう告げられた。 (古川は、自分がそれを打ち明けたと、気に病んで謝っていたが……)  むしろ、話が早い。  その上で、昴さまと共に海外へ出たいと、願い出る。 (諦めない。私は絶対に、諦めない!)  そんな暁斗の固い決意は、まるでオーラのように全身から放たれていた。  しかし時子は、まるで春風のように彼を迎え入れ、受け止めた。 「緊張しないでくださる? 怖い、お顔ですこと」 「失礼しました」 「昴と恋仲、なんですって?」 「はい。私は、真剣に昴さまと交際しています」  隠し立てするような真似をしたことを、お許しください。  そう、暁斗は真っ向から時子に告げた。 「昴さまを責めることは、お控えください」  そう、心から懇願した。

ともだちにシェアしよう!