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暁斗と一緒に、母を説得する決心した昴だったが、彼女のプライベートルーム前で、留まってしまった。
後は、そのドアをノックするだけなのに、ためらっていた。
「どうなさったのですか?」
「僕は……怖い」
古川は、昴の言葉にハッとした。
昴は確かに、この屋敷で一番わがままな人間だ。
もちろん、そんな彼を溺愛する両親にも、いろいろとわがままを言ってきた。
しかし、そのほとんどが他愛ないおねだりに過ぎなかったのだ。
(おねだりなんかじゃない、真剣な議論を、御両親に持ち掛けるんだ。昴さまは!)
昴の恐れや不安は、古川にも伝わってきた。
今後の人生をも左右し兼ねない選択を、迫られている。
怯える気持ちは、痛いほど解る。
尻込みする昴を、古川は励まし始めた。
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