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防犯カメラのインターホンで、昴に入室許可を与えたのは、時子の声だった。
だが、部屋の奥へ進んだ昴は、そこに父・英樹の姿をも見て、息を飲んだ。
「お父様!?」
そこには、時子と暁斗だけでなく、英樹まで居るのだ。
昴の鼓動は、ひどく速くなった。
(どうしよう。お父様に逆らったことなんて、ないよ……)
いつも優しく、おおらかに、昴のわがままを聞いてくれる、父親。
だがそれは、古川が考えた通り、他愛ないおねだりだ。
甘やかされて育ってきた昴は、これまで一度も真剣勝負を父に仕掛けたことはなかった。
古川の言うように、花園の件で意見したことは、ある。
(でもあの時は、文献があったから……)
自分自身の身の振り方を、自分自身の言葉で、父に訴える。
それは昴にとって、とても難しいことだった。
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