200 / 226

21

 母・時子に、暁斗との仲を認めてもらおうと勇んでいた、昴。  だが、室内には時子だけではなく、思いがけない人物もいた。  父親の、英樹だ。  両親二人を相手に、ちゃんと向き合えるだろうか。  説得できるだろうか。  昴に、再び緊張が走った。  そんな息子に、時子はいつものように優しく声を掛けた。 「よく来たわ、昴。お茶をいかが?」  穏やかな時子の様子が、昴をいくらかリラックスさせた。 「はい。ご馳走になります」  そう。  いつものように。 (いつもの僕で、自然に振舞えばいいんだ)  優雅な所作で、昴はテーブルに着いた。  自然に彼が選んだのは、背中に汗をびっしょりかいている、暁斗の隣だ。  息子の行動に、時子と英樹は一瞬だけ目を合わせた。 (昴ったら、柏の傍に座るなんて) (やはり、二人は愛し合っているようだな)  そんな無言の会話を、交わしていた。

ともだちにシェアしよう!