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 母から紅茶のカップを受け取り、昴はのどを潤した。 「とっても、美味しい。新しい茶葉ですか?」 「そうよ。ウバのクオリティシーズンが、手に入ったの」 「紅茶通の、お母様らしいですね」 「昴にも、ぜひ味わってもらいたいと思って」  そこで時子は、今思いつきました、というような表情を見せた。 「そういえば。昴はさっき、お願いがある、と言っていたわね。何かしら?」  彼女の言葉に、昴はカップを置き、素直な気持ちを口にした。 「僕は、暁斗と一緒に海外へ行きたいと考えています。どうぞ、お許しください」 「やっぱり、そうなのね」  そこの柏にも、同じことを聞きました、と時子は小さく溜息をついた。  その暁斗は、ひどく疲れている風に見える。  昴の胸は、痛んだ。 「暁斗、ごめん。僕が、もっと早くお母様に打ち明けていれば」 「いいえ、昴さま。全責任は、私にあります」  執事という身分でありながら、主人を愛してしまった。  それが、暁斗を苦しめていた。  昴が、これが元で両親と不仲になるかもしれない。  それが、暁斗をさいなんでいた。  互いを労わり合う様子に、ついに家長の英樹が口を開いた。

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