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「柏と昴が、深く想い合っているのは、解った」  温和な英樹の声だが、次には少々固くなった。 「しかし、昴。大野原伯爵の智弘さんは、どうする。先方は、乗り気なんだが」  そう言って、父は昴の出方をうかがった。 (昴なら、きっとこう言うはずだ) 『その縁談は、お父様たちが勝手に決めたんでしょう!? 僕、絶対にイヤですから!』  そんなわがままを言うようなら、昴はまだまだ子どもだ。  とても、若い執事ひとりに任せるわけには、いかない。  そう考えていた。 「……僕も、智弘さんのことは、お慕いしています。明るく知的で、お優しい方です」  これには、英樹だけでなく時子も驚いた。  もちろん暁斗も、だ。  しかし昴は、すぐに続けた。 「でも、ごめんなさい。智弘さんは、お兄様のような御方。僕が心から愛しているのは、暁斗です」  英樹と時子は目を円くして、顔を見合わせた。 (本当に。昴は、立派に成長した!) (どこに出しても恥ずかしくない、藤原家の一員ですわね)  夫婦は、そう目と目で語り合った。

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