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「僕は、暁斗を好きなだけではないんです。彼のおかげで、色々な学びを得ました」  彼はいつも身近に寄り添い、柔らかな心に導いてくれた、と昴は訴えた。 「時々パーティーで、楽しいお喋りだけに興じていた智弘さんとの違いは、そこです」  智弘さんは、僕をいつも褒めてくれたし、喜ばせることだけを話した、と昴は言う。 「でも暁斗は、時には僕に意見したり、注意したりしてくれました」  彼がいなければ、僕は今でも『わがまま子息』のままだったでしょう。  昴の語りを黙って聞いていた暁斗は、目頭が熱くなった。 (昴さま……そこまで私を想ってくださっていたのか……!)  さすがにこの場で涙を見せるわけにはいかないので、舌先を噛んでぐっとこらえた。  そこで英樹は、ようやく結んでいた唇を動かした。 「昴、例えば? 柏の教えで、どんな風に変わったと言えるのかな?」  自らを省みて、具体的に話せるようなら、昴は本当に成長したと言えるだろう。  英樹は、息子を試してみたのだ。 「はい。僕は以前、馬場で働く厩務員たちを見下していました。恥ずかしいことです」  だが、今は違う。  暁斗と共に乗馬をするようになってから、昴は激務をこなす彼らを尊敬するようになっていた。 「厩務員の皆さんがいてくれるからこそ、僕は気持ちよく乗馬ができるのです」  それだけでは、ない。  美味しいものを独り占めしないで、みんなと分け合う大切さ。  人間は個人で違った考えを持っていて、それは尊重しなくてはならないこと。  昴は、暁斗との日々を振り返りながら、ていねいに話した。

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