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「昴、よく言った。よく、ここまで成長したな」 「自分の過ちを、きちんと反省できているのね」  英樹と時子は、息子の成長を喜んだ。  しかし、それだけで人生の節目を決めていいものではない。  英樹は、無理に厳しい顔つきをして、彼に言いつけた。 「昴の気持ちは、解った。しかし、縁談を持ち掛けたのは、藤原家なんだ」  やっぱりやめます、では社交界での信用はガタ落ちになる。  そういった裏事情を、英樹は昴に初めて話した。  もう、彼に家同士の付き合い方を持ち掛けても、いいはずだ。  昴は、こんなにも大人びたのだから。 「一度、きちんと智弘さんにお会いしなさい。いいね?」 「昴、そうなさい。お断りするなら、それからよ」  最大限に譲歩した形の、両親の言葉だ。  昴は、ためらった。  暁斗に、うかがうような瞳を向けた。 「いいかな、暁斗。許してくれる?」 「はい、昴さま」  昴の成長を喜んだのは、両親だけでなく暁斗も同じだった。  これほどまでに、しっかりとしたお考えをお持ちになったのだ。  昴さまは! 「藤原家のお立場を思えば、私もそれが最善かと思います」 「ありがとう、暁斗」  英樹と時子が目の前にいなければ、抱き合ってキスを交わしたい心地の二人だった。

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