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 両親の承諾を得て、昴はご機嫌だった。 「暁斗! 僕たち、もう公認の仲だよ! 婚約者だよ!」 「喜ぶのは早すぎますよ。迂闊なことを、お話しにならないように」  時子のプライベートルームから退出した二人の様子に、古川も喜んだ。 「大丈夫だったんだな!? 巧くいったんだな、柏!?」 「心配かけて、すまなかったな。昴さまが、全て円く収めてくださった」  さすがは昴さま、と古川は目を細めた。 「正直、どうなるかと気を揉んでおりましたが。心配は無用でしたか」 「そんなに褒められると、照れるな。僕は、暁斗が隣にいてくれたから、頑張れたんだ」  そんな昴は、とても入室前に怯えていたようには、見えない。  まるで別人のように頼もしく、堂々としているのだ。 (昴さまは、柏と愛を育むうちに、人間的にも成長なさったんだな)  古川が暁斗を見ると、その鼻が少し赤い。  きっと心の内で、感涙をこぼしたに違いない。  しかしそれには触れず、古川は明るい声を上げた。 「では、お二人で渡航の準備ですね」 「そのことなんだが、昴さまと同じ日には発てないんだ」  暁斗と昴は、回廊を歩きながら古川へ事情を話した。

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