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暁斗が留学先へ出発する日は、すでに決まっている。
昴もまた、暁斗の行くアカデミー近郊にある大学へ、通う手筈だ。
しかし彼は、まず縁談の相手である大野原 智弘と、会わなくてはならない。
「お見合い、ですか?」
「そこまで、格式張った席じゃないんだ。ちょっと二人で、ディナーを楽しむだけ」
「御日取りは?」
「まだ、未定」
これは智弘のスケジュールにも合わせないといけないので、決まっていない。
後日、時子から昴へ伝えられることになっている。
ふむ、と古川は少し意地悪な視線を、暁斗に寄こした。
「これは妬けるなぁ、柏。大野原さまが、昴さまをぜひ、という話になったらどうする?」
「あの御方は、紳士だ。昴さまがお断りなされば、それ以上のことは無い」
「そんな余裕の態度、素直じゃないな。正直に、心配だ、と言ったらどうだい?」
う、と暁斗は言葉に詰まった。
横目で昴を見ると、少し表情が曇っている。
そこで、改まった様子でひとつ咳ばらいすると、本心を吐いた。
「本当は、かなり妬けるし、不安だ。昴さまが他の人と、二人きりでディナーだなんて」
「あ、暁斗!?」
「昴さま、浮気はダメですからね!」
「当たり前じゃないか。もう、やだな!」
古川の朗らかな笑い声に、昴と暁斗は二人して頬を染めた。
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