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昴が海外留学をする、という話は藤原家に勤める人間の誰もが知ることとなった。
そして誰もが、彼に温かな声を掛けた。
『馬の乗り方を、忘れないでくださいよ?』
『またご一緒に、ブドウをいただきたいと存じます』
『バラの花、品種を増やしておきますから。楽しみにしていてください』
『東広場の花園は、私どもで守りますね!』
暁斗の私室で、大きなクッションを抱きながら、昴は幸せを噛みしめていた。
「嬉しいな。みんなが、僕の留学を好意的に感じてくれてるみたい」
「昴さまの、人徳ですね」
「ううん。これは全部、暁斗のおかげだよ」
暁斗の愛が無ければ、僕は相変わらずの『わがまま子息』だった。
そんな風に、昴は感じていた。
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