210 / 226

31

 朝。  目覚めた昴に、本日のスケジュール確認を告げたのは、暁斗ではなかった。 「柏の代役、しっかり務めさせていただきます」  古川執事が、笑顔で立っているのだ。  おや? と思ったが、昴は昨夜の暁斗の言葉を思い出した。 『明日は早起きをして、片付けものや荷造りがあります』 (暁斗は、他に用事があるんだな)  すぐに、そう悟ったので、古川に笑顔を返した。 「古川なら、安心して任せられるよ」  微笑む昴だが、どこか陰がある。 (やはり、お寂しいのだろう)  支度を手伝いながら、古川はそう考えた。 「ねぇ。暁斗の出発スケジュール、古川は聞いてる?」 「はい。一週間後の、13時15分の便で発つ、と」  その返事に、昴はホッとした。  自分が暁斗から知らされている予定と、同じだからだ。  彼は昴に内緒で、そっと出発してしまうような考えは、持っていないらしい。 「長いフライトだね。15時間くらい、かな」 「時差も生じます。まるで、時を遡っているようでしょうね」  そんなことを話しながら、昴は身支度を整えていたが、古川の言葉に何か引っかかった。

ともだちにシェアしよう!