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「お父様、お母様。おはようございます」
「おはよう、昴」
「お食事にしましょう」
三人の家族が揃って朝食を摂ることは、珍しい。
両親は、多忙だ。
二人ともいないか、どちらかが欠席かが、常だった。
「どうなさったんですか? お二人とも、僕とご一緒できるなんて」
「たまには、いや、今後は昴との時間を、増やすようにしようと思ってな」
「海外留学ともなると、こうして一緒にお食事もできなくなるものね」
両親の温かな思いやりは、昴を喜ばせた。
朝食は、いっそう美味しいものとなった。
食事をしながらの会話は、また楽しいものだ。
昴は、笑顔でいろんな話を父母に聞かせた。
『暁斗を意識し始めたのは、乗馬がきっかけだったんです』
『暁斗は、名月でもないのに、お月見をするんですよ』
『ミヤコワスレが、暁斗の好きな花なんです』
昴の話しに、英樹も時子も笑顔だ。
「本当に、柏にぞっこんなんだなぁ、昴」
「全く、妬けてきますわ」
よく食べ、よく話し、よく笑い。
しかし食後のティータイムに、時子が少し改まった調子で語り掛けてきた。
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