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突然に差し込まれたスケジュールに、慌てたり、不平をこぼしたりせず、冷静に対処した、昴。
そんな息子に安心し、時子はもう一つの問題を口にしかけた
「実はね、昴。柏さんのことだけれど」
「暁斗が、何か?」
母が『柏』ではなく『柏さん』と、暁斗を呼ぶ。
これは、昴のパートナーとして、彼を認めてくれたかのようで嬉しい。
しかし……。
(暁斗について、何か問題ができたのかな……?)
さっと不安げな表情になった昴を見て、父・英樹が口を挟んだ。
「時子さん。その件は、私が昴へ伝えよう」
「お願いできるかしら、英樹さん」
「うん。その方が、良いだろう」
両親の間では、すでに理解しあっている風の会話だ。
さらに不安を募らせた昴は、一言でも訴えようとしたが、それは英樹に阻まれた。
「昴、ランチはホテル・アスカで12時からだ。急いで、支度をしなさい」
「は、はい。あの、暁斗のことは……?」
「ホテルへ向かう車中ででも、伝えよう」
「解りました」
今は、これ以上何も聞けないだろう。
そう判断した昴は、古川と共にダイニングを後にした。
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