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『ホテルへ向かう車中ででも、伝えよう』  朝食の席で、暁斗についてのことを、そう先延ばしにした、英樹だ。  こう聞けば、彼も昴と一緒に自動車に乗る、と考えるだろう。  昴も古川も、そう思っていた。  だがしかし。 「結局、お父様はご一緒じゃなかったね」 「旦那様に、緊急の御用が入った、と聞いております。ただ……」 「ただ?」 「その代わり、と言付かって参りました」  古川は、大切に白い封筒を昴へ差し出した。  正式な文書のように、シーリングスタンプが施されている。 「お父様ったら、大げさだな」  昴は軽く笑ったが、その頬は少し引き攣った。 (嫌な予感がする……!)  内容は、きっと暁斗についてのものだ。  彼に関して、何か良くないことが書かれているのだろうか。 「古川は、このお手紙の内容を、お父様に聞かされてるのかな?」 「……多少は」 「僕が取り乱したら、なだめろ、ってこと?」 「それは、昴さまが読んでから、ご判断ください」  謎めいた父の行動や、古川の言葉。  昴は、かすかに震える手で封を切り、手紙を読んだ。

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