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『空港まで、絶対に見送りに行くね』
『ありがとうございます。でも……』
『でも?』
『そうなると、離れがたくなりますね。飛行機が、このまま飛ばなければいいのに、と思ってしまいます』
柏が、そんな冗談を、と古川は目を円くしている。
「ね? だから、僕は空港へ行っちゃいけないんだ。暁斗の乗った飛行機が、離陸できなくなるから!」
笑いながらも、昴の目からは涙がこぼれた。
でも、それは一粒だけ。
藤原家の子息らしく、ぐっとこらえて前を向いた。
すると突然、昴を乗せた自動車が停まった。
奇妙なことに、急に停車したのに体に衝撃は無い。
「何だろう。村山、どうかした?」
「……」
返事が、無い。
「村山の体調が、心配だ。古川、様子を見てくれない?」
当然、はい、との返事があるはずだったが、古川はただ笑顔を昴に向けている。
「古川?」
「おめでとう、昴くん。君は試練に打ち勝って、想い人と結ばれるんだよ」
「えっ? あ、あれ……っ!?」
目の前にいるのは、古川のはずだ。
しかしそこには、淡い水色の法衣をまとった、背の高い男性が座っていた。
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