222 / 226

43

『空港まで、絶対に見送りに行くね』 『ありがとうございます。でも……』 『でも?』 『そうなると、離れがたくなりますね。飛行機が、このまま飛ばなければいいのに、と思ってしまいます』  柏が、そんな冗談を、と古川は目を円くしている。 「ね? だから、僕は空港へ行っちゃいけないんだ。暁斗の乗った飛行機が、離陸できなくなるから!」  笑いながらも、昴の目からは涙がこぼれた。  でも、それは一粒だけ。  藤原家の子息らしく、ぐっとこらえて前を向いた。  すると突然、昴を乗せた自動車が停まった。  奇妙なことに、急に停車したのに体に衝撃は無い。 「何だろう。村山、どうかした?」 「……」  返事が、無い。 「村山の体調が、心配だ。古川、様子を見てくれない?」  当然、はい、との返事があるはずだったが、古川はただ笑顔を昴に向けている。 「古川?」 「おめでとう、昴くん。君は試練に打ち勝って、想い人と結ばれるんだよ」 「えっ? あ、あれ……っ!?」  目の前にいるのは、古川のはずだ。  しかしそこには、淡い水色の法衣をまとった、背の高い男性が座っていた。

ともだちにシェアしよう!