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エピローグ

 空港の到着口前に、暁斗は落ち着きなく立っていた。  彼の待つ飛行機は、15時間ものフライトを終えて、まもなく着く。  その2時間も前から、暁斗はここに立っていた。  そして、待っていた。  何度も何度も、腕時計を見ながら、待っていた。 「まだ、2分しか経ってないのか」  時の経つのをこんなに遅く感じるのは、生まれて初めてだ。  しかし、ようやく長旅に疲れた乗客の姿が見え始めると、背筋を伸ばした。  背筋だけでなく、足の爪先まで伸ばして。  首も伸ばして、人混みの中に昴を探した。  腕を伸ばし、手にしたウェルカムボードを掲げる。  A2サイズの、大きな手作りボードだ。  太いマジックペンで『藤原 昴さま』と書かれている。  空きスペースには、ゆるい馬の絵やら、ゆがんだバラの絵やらで、混沌とした有様だ。  暁斗は優秀で有能な執事だが、絵心だけはなかったようだ。  それでも、精いっぱい昴を想い、描き上げたボードだった。  そして、ざわめく人混みの中、懐かしい声が聞こえてきた。 「暁斗! ここだよ!」 「昴さま!」  二人とも、大急ぎで互いの元へと走った。  あれから半年の月日が流れ、昴はようやく暁斗の待つ国へと留学にやって来たのだ。

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