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予想外の治療 3
目を覚ますと病室にいた。
のっそり起き上がると、昨日と同じ、随分時間が経っていて息を吐く。
昨日と同じ治療であったはずが、まさかあんなことになるなんて。
その事もあってか、今日より少し疲れている気がした。
そっと体を起こす。そうすればズクン、とお尻に違和感を感じて、モゾっと動けばその違和感はより強くなった。
「う゛……」
困った。これ、どうしたらいいんだろう。
違和感を感じると、次第にお尻で感じた快感を思い出してキュッとそこに力が入ってしまう。
「ぁ……ど、しよ……ぅ、やだ……」
ソワソワしてしまい、ナースコールを押すか悩んでいると、ノック音が聞こえて顔を上げた。
返事をすれば久我先生が入ってきて、おもわず彼らを助けを求めるように見つめてしまう。
「神木さん、体の調子はどうですか」
「っ、せんせ、」
「痛みや違和感はありますか?」
傍に来た先生に手を伸ばせば、彼はそっと手を握ってくれた。
「お、おかしい、です。なんか、ずっと、」
「……一度深呼吸しましょうか。吸って、吐いて」
「っふ、ふぅ……」
「上手ですよ」
先生の手が背中を撫でる。
そうしてしばらくすれば、少しずつ違和感を受け入れられて、大人しく座ることができた。
「前立腺という部分ですね。そこが刺激されると快感を得ることができます。男性特有のものですね」
「……これを、今後も、ずっと?」
「そうですね……。徐々に開発を進めていこうと思っていたのですが……、できることなら、そうさせてもらう方がいいかもしれませんね」
「……」
「……とりあえず、明日の治療はお休みにして、午後から一緒に何かしてみませんか? お散歩でもどうです?」
久我先生の誘いに頷く。
彼は握ったままの手を撫でて、そっと口角を上げた。
「では、今日はゆっくり休んでください。今のお身体の調子はどうですか? 温かい? 寒い?」
「あ、温かい感じです。じんわり……」
「うん。効果が出てますね。もしも急に寒くなったり、逆に暑くなってきたら教えてください。遠慮なくナースコールを押してね」
「はい」
返事をすれば、彼は話題を変え、たわいない話をして、暫くすると出て行った。
翌日の午後。
予定通り、先生と一緒に中庭へ出た。久々に感じた風。頬を撫でるそれが心地いい。
「こうして外を歩くのは、久しぶりですか?」
「……はい。ずっと部屋か廊下にいたので」
ぎこちなく歩調を合わせる僕に、先生は横で静かに歩みを緩めてくれる。
今日の彼は珍しく白衣ではなく薄いカーディガン姿で、いつもの「先生」とは少し違って見えた。
「ここならいつでも出てもらって大丈夫ですよ。一人がつまらないなら、私や佐伯と一緒に行かせてくださいね」
「……でも、先生たちはお仕事が……」
「大丈夫です。ね、一緒だとこうしてお話できるし、楽しいですよ」
ニッと微笑んだ彼。自然と、頬が熱くなる。
昨日までの治療の余韻がまだ残っているせいか、先生の言葉や表情に胸がざわついた。
「神木さん、今はどうですか。違和感は?」
「……少し、残ってます。でも……こうしてると、気が紛れる感じです」
「それなら良かった」
先生の声は、穏やかで。
まるで、全部受け止めてくれているようだった。
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