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まどろみの中で ※
穏やかな一日を過ごした翌日の朝。
ご飯と一緒に出された薬を飲んで、服を着替えてベッドに座っていると、体がぼんやり重たくなって横になった。
相変わらずいつの間にかやってきた佐伯さんに車椅子に乗せられて処置室に向かう。
処置台に仰向けに寝ると腰と手を台に拘束されて、脚は左右バラバラで固定された後、鈍い機械音がしてゆっくり台が動き出し、開脚する体勢になった。それでもポケっと天井を眺めている。
「神木さーん、おはようございます。久我ですよ、わかりますかー?」
「……せんせ、」
「はい。じゃあ今から治療始めていきますね。初めはいつもと同じで、新しいことする時にはまた声を掛けますね。リラックスしててくださいね」
まずは手を繋がれて、それから足を触られる。
慣れてくると陰茎を掴まれ、優しく扱かれた。
腰が浮きそうになるのを拘束具に抑えられ、快楽が逃がせない。
「上手ですよ。このまま一度出してしまいましょうね」
「っぅ、ふ、うぁ、ぁ……」
ムズムズと気持ちいいのが上がってくる。
声を抑えられなくなった時「お尻も触りますよ」と柔らかい声と同時に、ニュルっと後孔に指が入ってきて、ガタッと大きく台が揺れる。
「前立腺に触りますね。佐伯」
「はーい。神木さん、触りますよ」
後孔に入っている指は佐伯さんのらしい。
気持ちいいところを撫でられて、ゆっくりと圧をかけられる。
「あっ、あ……あー! い、いく、いく……っ!」
びゅくっと射精する。
続けて前立腺を撫でられると気持ちいいところから降りてこられず、苦しくて涙が流れる。
「うぅぅ……っ、ぁ、やだ、そこ、ぁ、もうやだ、いっ、イッたから……!」
「佐伯、止めて」
ピタリと刺激が止む。
けれど痙攣する体は治まらない。
ゆっくりと温かくなっていく感覚がして、目を閉じてその温もりに浸ると、ようやくホッとできた。
「神木さん、落ち着いたかな」
「っん……」
「施術を続けても大丈夫?」
「……ん」
ぼんやりしたままゆっくり頷けば、久我先生に優しく頭を撫でられた。
「このまま、次に進んでも問題ないと思うから、進めるね」
「……つぎ、」
「咄嗟に動いてしまうと危ないので、少し拘束を強めるよ」
「ぅ……」
脚と腰の拘束が少しだけきつくなる。
太腿も動かせないように固定されてしまった。
ぐっと眉を寄せるけれど、頭を撫でられると力が抜けた。
「今から、尿道の方から前立腺を刺激していきます。極力痛みの無いように薬も使うけれど、痛かったり苦しかったら教えてね」
「……? はい」
「うん。昨日話をした気持ちよくなる薬は飲みたいかな?」
「くすり……要らない……」
ふわふわで先生の言葉全てを理解できない。
それでも『薬』はわかったので、もうこれ以上フワフワになるのは怖いと思って、拒否した。
「わかりました。じゃあ……力抜いて、深呼吸しましょう」
「ん……」
「──キシロカインちょうだい」
陰茎を掴まれて、先端を開かれるような感覚がした。
一生懸命深呼吸していると、ニュルニュルと気持ち悪いのが尿道を逆流してきて、つま先をキュッと丸める。
「三ミリですか」
「うん。前立腺に当たったら軽く振動させて、今日はそれで達せたら終了にするよ」
「わかりました」
「明日以降は後ろからも刺激しつつかな」
「じゃあ、神木さんが落ち着くように手握っておきます」
「そうして」
久我先生と佐伯さんの会話をなんとなく聞いていると、佐伯さんにそっと手を繋がれた。
胸に手を置かれて、トン、トンと一定のリズムで撫でられる。
「上手に深呼吸できてますよ。このまま継続しましょうね」
「っん、ふぅ……」
「神木さーん、今から入れていきますよ」
久我先生の声がして、佐伯さんの手を握った。
開かれた尿道から、何かが入り込んでくる。
気持ち悪い感覚に腰を引きそうになって、けれど拘束のせいで動けない。
「う゛っ、ぅぁ、ひぃ……っへ、へん、これ、なにぃ……っ」
「大丈夫ですよ。上手に呑み込めてるからね。一緒にゆっくり呼吸しましょうね」
「あぁっ、ぁ……はぁ、ふっ、ふぅ……っ」
痛くはないけれど、中まで入ってくるのから逃げたい。
全く気持ちよさは感じなくて、佐伯さんの手を握りながら涙を流して「やだぁ」と弱々しく零す。
「もうちょっとだけ頑張れますか? もう限界?」
「っ……ぅ、が、がんば、る、」
「ありがとうございます。じゃああとちょっとだけ」
またゆっくり奥まで入ってくる。
佐伯さんの手に縋るように気持ち悪い感覚に耐えていると、ある時ビィィンと響くような快感が走った。
「あっ──?」
「ああ、届いたね。ちょっと振動させるよ」
「ぇ、あ……っ、! あぁっ……!」
後孔側から前立腺に触られている時のように気持ちいいのが広がって、頭が真っ白になる。
「あ゛ぁっ、ぁ、だめ、だめ、あっ、いく、イク──ッ!」
ガクガクと体の痙攣が止まらない。
佐伯さんの手を強く握って、離せない。
「お、イけたね。振動止めるよ」
振動が止まっても体の震えは止まらなかった。
荒い呼吸を繰り返す。
尿道に入っていたものがゆっくりと引き抜かれていく。
ついて行こうとする腰は拘束にとめられ、するっとそれが抜けると一気に脱力した。
「……あ、佐伯、シート」
「はーい」
下半身に生温かい感覚がする。
それに、なんだかスッキリとして、不意に視線を股間に向けると佐伯さんが何やらシートを広げていて。
まさか、と息を飲む。
「っ、お、しっこ……もらし……っ!?」
「大丈夫ですよ。皆さんそうですからね」
「っ、〜っ!」
佐伯さんは嫌な顔ひとつせずに淡々と処理をして、久我先生は嵌めていたゴム手袋を外すと、優しい表情のまま、涙で濡れた頬を撫でてくれる。
「よく頑張りましたね。今日の目標も達成しました。体はどうかな?」
「ふ……っぅ、ぅ……」
「ああ、泣かないで。……もう少し落ち着いてからお話しましょうか」
拘束が外されていく。
優しく撫でられると温かいのがじわじわと膨れ上がって包まれるみたいで、だんだんと呼吸が緩やかになり、そっと目を閉じた。
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