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御社一族の歴史をおとぎ話みたいだと思う夕汰だが、そんな夕汰も夢幻(ゆめまぼろし)じみた不思議な現象を定期的に経験していた。 「おやすみなさい、おばあちゃん、お母さん」 父親の実家は数回のリフォームを経た快適な二階建ての住まいだった。 かつて叔父が暮らしていた二階の部屋を夕汰は使っている。 宿題を終えて、ベッドの中でぼんやりスマホを眺め、いつもと同じ就寝時間を迎えて。 夕汰は夢を見る。 『おいで』 どこか懐かしい声に呼ばれる。 導かれて進んでみれば優しく迎えてくれた両腕。 眠りの狭間に見る夢の中でまた眠りに落ちるような心地よさ。 何もかも委ねたくなる温もりに安心して身を捧げる……。 「……ふが……」 そして夕汰は夢から覚める。 物心ついた頃から見続けている夢だった。 最初は何度も同じ夢を見ると父親に報告していたが「ふーん、すごいすごい」とのらりくらりと聞き流され、その内夕汰も大したことではないのかと口にしなくなった。 (いや、やっぱり大したことなのでは?) ベッドの中、スマホのアラームを切った夕汰は寝ぼけまなこでぼんやりと天井を見つめる。 (しかもさ) この島に来てから夢の中身がはっきりしてきたというか。 前は呼ばれるだけだった、だけど最近は……ハグされるようになった。 「この島の【化けもの】パワーが影響してる……とか?」 姿かたちはぼやけているけど、確かにおれの夢の中にいる、誰か。 (貴方は誰……?) 「夕汰ー? 時間大丈夫ー?」 十分近くベッドでぼんやりしていた夕汰は、階下から祖母に呼ばれて慌てて飛び起きるのだった。

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