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初夜-8
アゲハはくすっと笑ってから、ちょっと待っててと言って立ち上がる。蘭もむくりと体を起こした。
すぐに戻ってきたアゲハの手には、筒状の容器。昨日のコンビニバイト中にも、何人か同じようなものを買っていってた記憶がある。
アゲハは筒状のものの蓋を開け、手のひらの上に傾ける。とろっとした液状のものが広がった。
「ローション、使ったことある?」
蘭は熱くなる顔をふるふると横に振った。いよいよアゲハが自分の中に──そう思うと、身体中が熱くなる。
そんな気持ちを知ってか知らずか、アゲハがくすっと笑って、蘭の腿を撫でる。
「全部、俺に任せてくれればいいから。…ね?」
高鳴る心音を落ち着かせるように、はあ、と息を吐いて、蘭はこくんと頷いた。
「じゃ、こっちにお尻向けて四つん這いになって」
さらっとそう言うアゲハにぎょっとする。戸惑う蘭に、アゲハがくすくすと笑う。
「恥ずかしいだろうけど、準備できないから。…ほら」
「わっ」
体を転がされて、腰を掴まれる。バランスを崩して、腰を突き出した姿勢でベッドに這いつくばる。すると、バスローブを捲られ後孔に指で触れられて、びくっと震えてしまう。
「や…っ…待って…」
「…痛かったら言うんだよ」
制止も虚しく、何かが自分の中に入っていく感覚がした。体が強張る。緊張している蘭の背中に、アゲハの唇が優しく落とされた。
「大丈夫。力抜いて」
その言葉に、気持ちを落ち着かせるように意識して大きく息を吐く。「そう、いい子」アゲハの甘い声に、強張りが溶かされるのがわかった。
想像していたより容易に、アゲハの指が侵入していく。案外痛くはないけど、ローションのぬるっとした感触や、入っていく感覚は少し気持ち悪かった。
ふと、アゲハの指が、蘭の中の何かに触れて止まる。それに触れられた瞬間、びくっと無意識に体が震えた。
なんだ、今の。痛いでも、異物感でもなくて…今のは──
「…気持ちいとこ、当たった?」
そう囁くと、アゲハはまたそこに指を当ててくる。今度ははっきりと快感が走る。
「あっ、あ…っ…」
思わず声が漏れてしまう。
なんで。性器に触れられてるわけでもないのに。それと同じか、それ以上の快感が蘭を襲う。
後ろに挿れる指を増やされると同時に、もう片方の手でバスローブの隙間に手を入れられ、胸の飾りをきゅっと摘まれてびくっと体が震えた。
敏感なところを同時に触れられて、自身が昂っていくのがわかった。
「あ、アゲハ…っ…」
思わず名前を呼ぶと、アゲハが小さく笑うのが聞こえた。また硬直してきた自身に触れられて、大きく背中を反らす。
少し擦られただけで、ほとんど色のない精が吐き出された。ガクガクと足が震える。
「…そろそろいいかな」
アゲハがそう呟いて、ベッドの上に転がっていたコンドームの箱を手繰り寄せ、中身を一枚取り出す。ぴりっと封が切られる音に、ぴくっと反応してしまう。
これ以上ないくらい丁寧に解されて、愛撫された体はもう蕩けそうだった。
後孔に、指なんかと比べ物にならないモノが充てがわれる。
ぐぐっと中を拡げられる感覚。思わず腰が引けてしまう。
「や……こわい…」
そう溢してしまう蘭の腰をアゲハが優しく撫でる。
「やめとく?」
そう訊かれると、きゅっと胸が切なく締め付けられた。
なんでそんな寂しいこと言うんだろうと、悲しくなってしまった。
「…それは、やだ」
子供みたいに口を尖らせる蘭に、アゲハが苦笑してから、「やめてほしかったら途中でも言うんだよ」と言いながら、中にゆっくりと入ってきた。
びくっと体が震える。
本来モノを挿れるところじゃないところを無理やり押し広げるんだから、相当な痛みなんじゃないかと思っていたけれど、案外そういうわけでもなかった。
アゲハがしっかり解してくれたからだろうか。
それでも、奥に入ってくるとさすがに苦しかった。思ったより深く入ってくるそれに、少し怖くなって体が竦む。
「は……ん、この辺かな」
ぽつりとアゲハが溢して軽く身を捩らせると、蘭の体に快感が走った。
まただ。また、気持ちいい刺激が襲ってくる。
「あ、や、なにっ…そこ…ああっ」
こんこんとピンポイントで当てられるように揺さぶられて、びくびくと体が震える。
「っ…ここさ、前立腺…って言って。精液の元?を作ってんだって」
アゲハが説明してくれるが、快楽に支配されつつある蘭の耳にはよく入ってこなかった。それより、アゲハが息を荒らげて、動きも少しずつ激しくなっていって…俺に興奮してくれているのかも、と思うと、体が熱くなった。
「は…痛くない…?蘭…」
痛くない、どころか。
──やばい、気持ちいい。こんなの、知らない。
ふと、体の中から感じたことのない快感に襲われ、蘭は背中を反らす。
その快感は発散せず、蘭の中にずっと留まっている。
いやだ、どうしよう。こわい、気持ちいい。──おかしく、なりそうだ。
「は、ぁ…!あ、あげは…っ…きもちい、の…止まんない…っ…」
「え?…もしかして、ナカでイっちゃった…?…ふふ…すごいね、はじめてで。…ま、さっきまで散々イかされてたもんね…」
「ああっ、だめっ、だめ…っ…も、おれ…むり…っ…」
蘭が涙をぽろぽろ流しながら訴えかけても、アゲハは動きを緩めてくれない。肌のぶつかる音やぐちゅぐちゅと中をかき乱す水音が耳を犯す。
「ん…もちょっと、がんばって…いい子だから…」
「んあっ、アゲハ…っ…ああ、ああっ──!」
これまでにない絶頂を感じたところで、蘭の意識は薄れていった。
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