25 / 46

第25話 テスト、受験、受験……色事?

「えっ……そんな顔して、なっ……んっ……」  紫季は、突然唇を奪われた。  両手で頬を包まれ、逃げ場のないキス。  もう、あの時みたいな軽いやつじゃない。これは——大人のキスだ。 「んっ……ふっ……んん……」  凛太朗の唇が、強く、深く食らいついてくる。 無意識に体が強ばって、紫季は思わず唇を固く結んだ。  けれど、その閉じた口を、下唇をなぞるように凛太朗の舌がジュル、とこじ開けていく。 「紫季、開けて」  低く、濡れた声。  その一言で、紫季の唇は簡単に開いてしまった。 「……いい子」  甘く囁かれたあと、凛太朗の舌がすぐに紫季の中へと侵入してくる。  絡めとられ、啜られ、舐められて——口の中で音を立てながら、いやらしい音が響いた。 「は……っ、んっ……」  腰の奥がゾワゾワする。立っていられなくなった紫季を、凛太朗がそっとベッドに倒す。  ひと息つく間もなく、すぐにキスのシャワーが降ってきた。  額、まぶた、鼻先、頬、そして——唇。  ひとつずつ、丁寧に音を立てて触れられるたび、紫季は身をよじる。  内側からこみ上げる、得体の知れない甘い震え。  その正体を確かめるように、凛太朗を見つめた。 「り……んたろ……」  でも、そこにいたのは、いつもの優しい顔じゃなかった。  獲物を狙うみたいな、熱くて、強い目。 「ぁ……」 (……喰われる)  紫季の本能が、そう囁いた。 「紫季、脱がすよ」  返事をする間もなく、「はい、バンザーイ」と冗談めかした声が聞こえたかと思うと、Tシャツが頭の上をすり抜ける。  続けてハーフパンツ、そして下着まで、一気に剥ぎ取られてしまった。  生まれたままの姿になった自分と、服をきっちり着たままの凛太朗。  なんだか滑稽で、恥ずかしくて、紫季は目の奥がジンと熱くなる。  ——ふたりで黙っているのが、こんなに苦しいのは初めてだった。  言葉が足りないのが怖い。  いつものように笑ってほしいのに、目の前の凛太朗は“雄”の顔をしていて、怖くて、目をギュッと閉じてしまう。  その直後、大きな影がゆっくりと自分を覆った。  凛太朗の気配が、どんどん近づいてくる。  紫季の肩が、ぴくっと跳ねた。 「紫季……こっち向いて」 紫季は、恐る恐る凛太朗の方を向いた。  凛太朗は肩で大きく息をしながら、眉間に深い皺を寄せている。  突然、両手で頭をかきむしり、次の瞬間、自分の頬をパンッと叩いた。乾いた音が部屋に響き、紫季の肩がビクッと跳ねる。  「ごめん、紫季。俺、暴走した……。ちょっと、落ち着く。だから、少しだけ待って」  凛太朗は天井を見上げ、呼吸を整えようと何度も深く息を吸って吐いた。  その姿に、紫季はようやく少しだけ安堵する。だけど、鼓動はまだ早いままだった。  「……一旦、落ち着く」  自分に言い聞かせるように繰り返した後、凛太朗はそっとベッドの端に置いてあったタオルケットを手に取り、紫季の裸の身体に静かにかけた。  優しい手つきだった。さっきまでと全然違う。  「……ごめん。一回、ちゃんと話そう」  そう言って凛太朗は紫季の肩に手を添え、ゆっくりと身体を起こす。タオルケットを自分の肩にもかけるようにして、ふたりをそっと包み込むようにして抱きしめた。  「紫季……本当にごめんな。なんか、お前がここにいるのがさ……もう堪んなくてさ。しかも、今日の紫季、めっちゃガードゆるいし、顔もエロくて……まじで理性、飛んだ。怖かったよな……?」  凛太朗の腕の中で、紫季はこくんと小さく頷いた。  さっきまでとは違う、優しい熱。けれどまだ、胸の奥がザワザワとざらついていた。  「ほんと、ごめん。俺、ちゃんと反省してる……。なぁ、紫季。仕切り直しても、いい?」  「仕切り直し……?」  「うん。まずはさ、お互いの“知識”を明確にしよう」  (……知識……?)  紫季は目を瞬かせる。なんでそこで“気持ち”じゃなくて“知識”なの?と思ったが、空気を壊したくなくて黙っていた。  「えっと……知識とは?」  「そうだな。まず、男同士のセックスのやり方。紫季は、どこまで知ってる?」  凛太朗の真剣な顔に、(今それ……?)と一瞬戸惑うも、紫季もつられて真面目に答える。  「えっと……ネットで調べた知識しかないけど……。攻めと受けがあって、攻めは挿れる側、受けは挿れられる側。で、受けは……事前準備がいるから大変。洗って、拡張して……。痛みはある程度覚悟。前立腺探して……体が柔らかければ良い……。準備物は……ローション、ゴム、バスタオル。ってとこ、かな……。何か、間違ってる?」  紫季は不安そうに凛太朗を見上げた。  「いや、だいたい合ってる。……で、紫季は、どっちやりたい? 挿れたい? 挿れられたい?」

ともだちにシェアしよう!