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第41話 冬、白い息、あの日の約束
その言葉を聞いた瞬間、凛太朗の中で何かがはじけ飛んだ。
「……紫季、ほんとに……いいの?」
確認のように囁いた声はかすれていて、けれど紫季はこくんと小さく頷いた。
次の瞬間、紫季は凛太朗に押し倒されていた。
躊躇なんてなく、触れたくて、味わいたくて、ずっと我慢していた欲望が堰を切ったような表情でこちらを見ていた。
「ずっと……ずっと触りたかった。紫季に……めっちゃくちゃ我慢してた。だから……正直、今、めっちゃやばい」
強く抱きしめながら、紫季の服の上から胸元にキスを落とす。
そのまま唇が喉を這い、耳元を甘く噛むと、紫季は小さく息を呑んだ。
「凛……っ、あっ……」
「そんな声聞いたら、俺は理性が飛ぶぞ」
熱くなった手が紫季のスエットの裾をたくし上げ、指先で肌をなぞる。
紫季の身体がびくっと震えて、「……んっ」と、喘いだ。
その瞬間、凛太朗がため息をついた。
「はぁ……可愛すぎる。もう……俺、ほんとダメだ」
凛太朗の手が、二つの小さな突起にそっと触れると、びくんと跳ねた紫季が腕をつかむ。
「……やだ、ちょっと、待って……恥ずかしすぎる……」
「……ごめん、でも止まれない」
キスで宥めるようにしながら、凛太朗はすっと立ち上がった。
そしてベッドのヘッドボードからローションを取り出す。
「……まだ、持ってたんだ」
呆れたように言う紫季の声は、ほんの少しだけ嬉しそうだった。
「当たり前だろ?これからは一瞬でなくなるかもよ?」
凛太朗の言葉に、紫季はドキンとした。
(エロいんだよー!その色気が滲み出たニヒルな顔ー!)
「冷たいけど、我慢してな?」
「……ん」
ぽつりとこぼした紫季の声が、少し震えていた。
滑らかな指が、ぬるりとした感触を連れて奥へと入ってくる。
はじめは慎重に、ゆっくりと。
紫季の表情を何度も確かめながら、凛太朗は丁寧にほぐしていった。
指が奥へとゆっくり進んでいくたび、紫季の身体は少しずつ熱を帯びていく。
凛太朗の指はただ押し込むだけじゃない。内部をなぞるように、浅いところを撫で、たまにくすぐるような軌道を描く。
「……んっ、ぁ、っ……や、凛……それ、……変にっなる……」
紫季の瞳が潤んでくるのを見て、凛太朗は唇の端をゆっくりと持ち上げた。
まるで、その乱れる姿が愛おしくて仕方ないとでも言うような……
「紫季、変って……どんな?」
「ん……言わなきゃダメ……?」
「言わなくていいよ。感じてるの、丸わかりだから」
紫季の入り口をもう一本の指でそっと押し広げながら、反対の手で下腹をギュッと押す。紫季は目を見開いたまま震えた。
「や、あっ、そこっ……!や、やだ、そこは……っ、や……っ」
腰が勝手に跳ねて、凛太朗の指を締めつける。
「うわ……すごいトロトロ……」
凛太朗は紫季の頬にキスを落とし、ゆっくりと唇を耳元に滑らせる。
「ね……限界。挿れてもいい?」
紫季は潤んだ瞳で凛太朗を見つめ、
息を飲むように、「……早く、挿れて……」と零した。
ローションと一緒に投げられた避妊具に、凛太朗が手を伸ばしかけた瞬間――
紫季の手がそれを止めた。
「……今日だけ、なしで……だめ?」
囁くような声。
指先に込められた力は、どこか必死だった。
「えっ?」
凛太朗が息を呑む。
「今日は0.01ミリでも離れたくない……」
喉が熱くなる。
この数ヶ月、触れ合えなかった日々が一気に押し寄せてくる。
どうしようもなく、堪えていた感情が、堰を切って溢れそうだった。
「……わかった」
その声と同時に、凛太朗は紫季をベッドに押し倒す。
何も隔てるもののない肌と肌が、重なり合った。
凛太朗の熱が、固く、雄々しく紫季の太腿の内側に当たる。
――こんなに、熱かったっけ。
それが入ってくるというだけで、喉の奥がきゅっと詰まり、腰が小さく逃げた。
でも凛太朗は逃さない。紫季の膝裏を持ち上げ、脚を開かせたまま、ぬるりと先端をあてがう。
「あっ……ん、んんっ……!」
押し広げられる感触。
ぷちぷちと小さな音が響くほど、きつくて狭い内側に、凛太朗の硬さが、根元からゆっくりと差し込まれていく。
「ひっ……あ、や……」
甘く掠れた声が漏れた。
目尻に涙がにじむ。
でも、紫季の手は凛太朗の背にまわり、逃げようとはしなかった。
「大丈夫……もっと、奥まで……」
震える声でそうねだる。
凛太朗の喉がかすかに震え、腰が深く沈んだ。
「ん、んっ……ぅ、あ、あっ……!」
奥を擦られるたび、ビクビクと紫季の脚が震える。
狭い場所に、熱がごりごりと突き立てられる。
ぐちゅ、ぐちゅ、と肌の奥から音がして、羞恥と快感が同時に押し寄せる。
「紫季……気持ちいい?」
耳元で問われ、震える声で「うん」と返すと、また一段深く突かれた。
「あっ、だめ……! それ、あぁ……!」
足の指先がぎゅっと丸まる。
腰の奥がじんじんと痺れて、凛太朗の形にぐずぐずにされていくのがわかる。
凛太朗は紫季の細い腰をしっかりと支え、その奥深くへ、何度も、何度も熱を送りこんだ。
密着した肌から伝わる体温。
軋むベッドの音すら、ふたりの情熱を物語っていた。
乱れる呼吸。震える吐息。
言葉にできないほどの幸せが、肌を通して交じり合っていく――。
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