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【2.新たな出会い】

部屋割りを見て思わず固まってしまった。 見るからにガッカリする俺を見て、陸が笑う。 「でも部屋隣だから!怖い先輩だったら逃げてこいよ!」 と、声をかけてくれる陸に少し安心した。 *** 割り当てられた部屋の鍵は寮を管理している先生から貰った。 鍵穴に差し込むと、当たり前だけど、するりと回る。 不安が現れてたのか陸が背をぽんぽんと叩いてきた。 「大丈夫、俺が近くにいるから」 そう言って手を振り隣の部屋に入ってく陸。 「…大丈夫」 陸の言葉を繰り返して部屋へ入る。 入った先は広めの廊下。 無駄なものは置いてない、部屋へと続く廊下。 距離としてはほんの数メートル。 だけど俺には長く長く感じた。 ドアの前に立つ。緊張する…。 隣に陸がいないとやっぱり不安だ。 「いい加減入ってこいよ、新入生」 低く落ち着いた声が少し笑いを含んで聞こえてきた。 扉を開けると、ソファに座った男子がこちらを見ていた。 さっきまで本を読んでたのか、手元には本がある。 見た目は寡黙そう。 切れ長の目がこちらを見ている。 「き、今日からよろしくお願いしまふ!」 緊張しすぎて舌を噛んでしまった……うぅ、消えたい。 それを誤魔化すように笑みを浮かべる。 先輩は少し目を見はった気がした。 舌を噛みながら挨拶をする俺を見て、少し固まった先輩がククっと笑う。 見た目は大人びて見えるのに、笑うと年相応に見える。 思わず見つめてしまう。 「部屋の説明をするか、もっと入ってこい」 入口にいつまでも立ってる俺に手招きし、指を指す。 「部屋の奥の、あれがお前のベッド」 「入口側が俺、荷物やら服やらはクローゼット1つしかないから半分お前のな」 「あとはテレビと机とソファ。共用な」 続けて廊下に行き、 「トイレは玄関の近くの扉、その隣が洗面台と風呂」 「一気に話したけど分からなかったらまた教える。」 そう言うと先輩は部屋に戻っていった。 俺も黙って後をついて行く。 ソファに座った先輩がぽんぽんと隣を叩いた。 ……来いってこと、かな? 戸惑いつつも、隣に座るとニカッと笑う。 見かけによらず、よく笑う先輩だ。 いつの間にか不安な気持ちは無くなってた。 「改めて、俺は瀬川悠人。2年だ、よろしくな」 「小鳥遊優希です。よろしくお願いします!」 自然と笑みが漏れる。先輩はちょっとたじろぎながら首の後ろを掻いていた。 ──新しい出会いと、新しい生活。 その夜ベッドの中で胸の高鳴りを感じながら、目を閉じた。

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