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第2話②

「お~い、(なぎ)~、ばあちゃん~、いるか~?」  (ゆたか)叔父さんの声だ。 「なんだい、騒々しいね」  とばあちゃんが厨房から戻ってきたそのとき、ちょうど叔父さんが店の入口から入ってきた。   趣味のサーフィンで真っ黒に日焼けした肌に、鍛え上げたがっしりとした身体を持つ豊叔父さんは、40の半ばも過ぎてはいるけど充分三十代後半でも通じる見た目をしている。ばあちゃんは『嫁の来手がない』なんていうけど、叔父さん本人に結婚する気がないだけで、実は女性客に結構モテていることを僕は知っていた。 「凪、喜べ! 今年のバイトのやつら連れてきたぞ」  叔父さんは僕を見て笑顔を浮かべると、後ろを振り向いて「三人とも中に入ってくれ」と声をかけた。  「はい」と返事が外から聞こえ、男の人たちが三人、ぞろぞろと店の中に入ってくる。 (うわぁ……っ)  僕は思わず見惚れてしまった。  三人とも、このあたりでは絶対に見かけないほどのイケメンさんだ。雰囲気もおしゃれであか抜けているし、それにみんな180センチ近くありそうな長身で体つきもしっかりしている。165センチのちびひょろで、田舎の人間丸出しの僕とは大違いだ。 「こっちはこの海の家の経営者のばあちゃん。んでこっちは孫の凪。しおさい亭は基本この二人が回してるから、昼時はしっかり手伝ってやってくれよ」 「よろしく頼むね。若い人が来てくれて助かるよ」  ばあちゃんが三人に向かって話しかける。  僕も彼らに向かって「よろしくお願いします」と頭を下げた。 「どうも~。俺、矢吹(やぶき)(れん)っす」  いちばん最初に、ミルクティーみたいに綺麗な髪色をした人が口を開いた。  明るそうな人だ。二重の目が印象的なくっきりとした顔立ちは少し派手な雰囲気があるけど、人懐っこい笑顔が素敵だ。僕と目が合うと、茶目っ気たっぷりにウィンクして寄こしてくれる。  そんな蓮さんを、横に立った茶髪の男の人は横目で呆れたように見ていたが、僕とばあちゃんの方を向いて丁寧に頭を下げた。 「初めまして、春原(はるはら)蒼佑(そうすけ)です。よろしくお願いします」  落ち着いた雰囲気の人だ。まっすぐ伸びた背筋や佇まいは凛としているが、微笑むと目じりが下がって途端に親しみやすい印象になる。蓮さんよりもさらに長身で、もしかしたら190センチくらいあるだろうか。まさに頼れるお兄さんといった感じ。  そして三人目。  彼は黒髪でしゅっとした綺麗な顔をしていた。緊張したような固い顔つきで床に目を落としていたが、自分に視線が集まるのに気が付いて顔を上げる。  正面から目が合った。 「……っ」    彼は僕の顔を見て驚いたようにわずかに目を見開いたが、すぐにぐっと口を引き結び、僕に鋭い視線を向けてきた。

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