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第2話

 ……とはいえ、なかなかチャンスがないんだよな。  浩貴の家は母親は他界していて、父親と浩貴と弟の男所帯だ。この弟が問題で、まだ小学生ということもあり、帰ってくる時間はまちまちだし、なにより何度注意してもノックをせずに浩貴の自室へ飛び込んでくる。  そんな環境ではムードたっぷりに翔多を押し倒すことなどできはしない。  一方翔多はと言えば、伯母さん夫婦の家へ下宿中の身である。伯母さんが専業主婦で人づきあいが良く、近所の主婦たちの溜まり場みたいになっているので、これまた、愛を語り合い、ベッドへ……というのは無理だ。  どちらの家もキスするのが精一杯というところだ。  ……頭の中では何回、翔多とエッチしていることか。もうすごいこと翔多にしちゃってるぜ、オレ。  しかし、妄想や夢の中では、どんなにいやらしいことや口では言えない淫らなことを翔多にしても、当たり前だがなんの意味もない。  いや、妄想や淫夢は、より浩貴の情欲を煽り、狂おしいほどの恋心を刺激する。  自慰は、したあとになんか虚しくなるし……。  勿論、浩貴だっていつもそんなことばかりを考えているわけではない。  翔多と二人で遊園地に行ったり、映画に行ったり、そういう健全なデートもすごく楽しい。  ……だが、よくよく考えてみると、まだ二人が普通の親友同士だった頃にも、そういう場所へは遊びに行っているのだ。  そう、今は二人は恋人同士なのだ。  オレは翔多が愛しくてたまらない。翔多を抱きたい。あいつのすべてをオレのものにしたい。この腕の中で翔多を思い切り泣かせて……、 「浩貴、なにぼんやりしてんのー?」  能天気な声とともに翔多がヒョコッと浩貴の前に顔を見せた。  ちょうど翔多のあられもない姿を想像していた浩貴は、ものすごく驚いてしまった。

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