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第5話
そして、もっとはっきり正直に言ってしまうと、浩貴は翔多が着替えている姿や、彼の水着姿を他の男子生徒に見られることも嫌だった。
他の男子生徒たちが、翔多のことをエッチな目で見ているわけはないと、頭では分かっているのだが、感情のほうはどうしても不愉快を叫んでしまうのだ。
翔多を愛しているからこそ独占欲も限りなく大きくなってしまう。
……もしもこの世に、運命の赤い糸というものが本当にあるのなら、二人は絶対にそれで結ばれていると信じていた。男同士だって関係ない。
今まで、こんなに誰かを好きになったことなどなかったから。
愛しくてたまらない相手、そのすべてを手に入れたい相手……。
翔多……。
もしも二人が一つになれる夜が来たならば、うんと優しく翔多を抱きしめたい……。
ドキドキと高鳴りっぱなしの胸を抱え、指折り数えて待っていた日がやって来た。
浩貴と翔多が通う日向高校は土曜日も午前中だけ授業がある。
放課後、学食でお昼ご飯を食べた二人は、帰り道の途中でスーパーに寄った。
せっかくだから、晩ご飯は二人でなにか作ろうということになったのだ。
なにを作ろうかと話し合った結果、失敗することがまずないだろう、市販のルウを使ったビーフシチューと、これまた市販のドレッシングを使ったシーザーサラダというメニューに決まった。
スーパーで買い物を済ませ、パン屋で焼きたてのバゲットを買い、翔多の下宿先へ向かう。
そのあいだもずっと浩貴の胸の鼓動は速くなる一方だった。
こっそり翔多のほうを見ると、いつも通り息を呑むほど綺麗で……。
「翔多……」
その愁いを帯びた美貌に話しかけると、
「なにー?」
愁いは一気に霧散し、明るい笑顔を見せた。
でも、今日の翔多の笑顔は、いつもの能天気なほどの笑顔ではなく、どこか緊張しているふうである。
初めての二人きりの夜……。翔多もオレと同じ思いを共有してくれているのかな……?
浩貴はそんなふうに思い、心を甘く疼かせた。
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