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第14話
「翔多、まだ痛い?」
「……痛い」
初めての情交のあと、浩貴は翔多を自分の腕の中に抱きしめていた。
愛の行為は翔多に少なからずの無理をさせたようで、ビールの酔いもすっかり冷め、血の気の引いた顔色をしている。
「ごめん……」
浩貴は恋人の髪を優しく撫でながら、謝った。
すると、翔多が大きな瞳で睨んでくる。
「……謝ったりしないでよ。確かに痛かったけど、嫌じゃなかったし、オレだって浩貴に、て、手でし、してもらったときとか、すごく、き、気持ちよかったし……」
そう言うと、蒼白だった顔が少し赤くなった。
「……翔多」
……どうして、おまえはそんなにかわいいんだよ……。
「翔多……」
愛しくてたまらない恋人の名前を繰り返し呼んで、彼を強く強く抱きしめる。
「ちょっと……浩貴っ……苦しいー」
腕の中の翔多がいつもの明るい声で訴えてきた。
浩貴は抱きしめる腕の力を緩めると、翔多と視線を合わせ、微笑みを送った。翔多ははにかみながら微笑みを返してくれる。
「翔多、好きだよ……」
「オレも浩貴が、好き……」
自分は世界で一番幸せだと、浩貴は心から思った。
後日談。
自分はアルコールに強いとあれだけ得意げに宣言し、実際三日に一度は伯父さんの晩酌に付き合っているという翔多が、なぜ、あんなに少量のビールで酔っ払ってしまったのか、浩貴は不思議だった。
なので、こっそり翔多の伯父さんに聞いてみた。
返ってきた伯父さんの返事はというと……。
「翔多には内緒だけど、あいつのコップに入れてきてやるのは、ノンアルコールビールなんだ。それでもあいつ『なんだかふわふわ楽しくなってきたー』とか言ってるよ。気の持ちようっていうか、翔多はもともと能天気な性格だからな。まあ、そういうことなんだが、くれぐれもこのことは翔多には内緒な、浩貴くん」
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