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第20話

 家が揺れてるような気がする。  気のせいかな? ふわふわふわふわ、なんだかとっても楽しい。 「なにがアルコールに超強いだ。めちゃくちゃ弱いじゃねーか」  気が付いたときには翔多は浩貴に抱きかかえられるようにして歩いていた。  浩貴が呆れたように呟いているのが、ぽやんぽやんした頭に届いてくる。  えー、オレ、アルコールに強いよー。だって伯父さんの晩酌につき合ってもほとんど酔わないもん。  ありゃ? やっぱり家揺れてない? 浩貴。……え? 酔っ払ってるからだって? そんなことないよ。酔っ払ってないもん。  浩貴がほとんど引きずるようにして部屋に連れてきてくれ、ゆっくりとカーペットの上に座らせてくれる。  ここまで来て、ようやく翔多は自分は酔っ払ってるのかも、と思った。  このふわふわした妙に楽しい気分と、ちょっとふらふらする足元、これは過去に数回体験した酔っ払ったときと同じ感覚だ。  ……でもなんでだろ? いつも伯父さんの晩酌につき合っても、こんなふうにはならないのに。浩貴と二人きりという興奮が酔いを誘発しているのだろうか……それは大いにありえる。  それにしても、こんなはずじゃなかったのに……。  酔い潰れた浩貴をオレが介抱してあげて、あわよくばオレが浩貴を押し倒してやろうって思っていたのに。これじゃ無理だ。思考力は半分酔いに支配されてるし、体にも力が入んない。 「大丈夫か? 翔多。水、飲む?」  浩貴が心配そうに顔を覗き込んで聞いてくれる。  本当、浩貴って優しいね。なんかオレ今ならどんなに恥ずかしいことでも言えそう。  もしかして酔っ払って良かったのかもしんない。

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